緑茶にO-157への殺菌作用
=渋み成分がベロ毒素も中和=
(1997年4月3日 時事通信ニュース速報)
-
緑茶などに含まれる渋み成分カテキンに、病原性大腸菌O-157の菌を殺し、菌がつくり出すベロ毒素も中和する働きのあることを昭和大学医学部の島村忠勝教授(細菌学)のグループが突き止め、4月3日、札幌市で開かれた日本感染症学会で報告した。
同グループは、カテキンがコレラ菌やぶどう球菌など複数の細菌の機能を抑える働
きを持つことに注目。カテキンを含む溶液中にO-157菌を加える実験をしたところ、溶液のカテキン含有率を通常人が飲む緑茶の20分の1に薄めても、24時間以内で菌はすべて死滅した。試験管内でマウスの致死量のベロ毒素にカテキンを加えて約18時間置くと、毒性が中和され、これをマウスに投与しても死亡例はなかった。
同グループの大久保幸枝講師は「カテキンは胃の中でも吸収・分解されず、安定し
ている。食中、食後に緑茶を飲めば、感染防止に役立つのではないか」と話している
。
1996年にO-157による食中毒が日本中で問題になりました。筆者は、オーリングを用いてその予防法を模索し、同年7月31日にオーリング博物館の特別展として「病原性大腸菌O-157の予防とオーリングテストの活用」を展示いたしました。そのなかの「O-157の感染予防について」《参照》の項に、昭和大学医学部細菌学の島村忠勝教授らの実験結果やオーリングテストで類推されたことを紹介いたしました。
同年8月10日の東京新聞夕刊に、島村教授が緑茶1ccにO-157を1万個入れ、直後、1時間後、3時間後、5時間後、24時間後の菌数を培養して食塩水と培養液を対照に調べたところ、緑茶では時間とともに菌数が減少し、5時間後には菌数が0となったことが伝えられています。
今回は島村教授のグループが、成分のカテキンが菌を死滅させたこと、またベロ毒素の毒性をカテキンが中和させることを実験で確認して学会に報告されました。
お茶は手軽に入手でき、またその安全性も長期に確認されています。食中毒の予防ばかりでなく、いろいろな疾患の予防に大いに役立てていただきたいと思います。
1997年04月09日 掲載
更新
山本重明